東京タワーと黒本尊のパワーが広がる増上寺
徳川家とゆかりのある増上寺は、東京都港区芝公園内にあります。増上寺を中心とした芝公園はパワースポットとして知られていて、都心にありながら自然豊かで、四季折々の景色を楽しめる広大な公園です。観光客はもちろん近隣のオフィスなどで働く人たちのやすらぎの場となっています。
増上寺には、国の重要文化財に指定された中門・三解脱門(さんげだつもん)があります。三解脱門とは三つの煩悩「むさぼり・いかり・おろかさ」を解き放してくださる門と言われています。煩悩解脱とあらば三解脱門をくぐって、増上寺を散策してみたくなりませんか?なかなか寺院へは足が向かないという方は、毎週日曜朝9時から「日曜大殿説教」がありますので、1時間ほどお説教を拝聴するのもお勧めです。一般の方でも自由に参加できます。
増上寺の大殿本堂は、極楽の世界を現して荘厳に造られています。そして本堂後方には東京タワーが見えます。荘厳な古き時代の建造物と、そびえ立つ近代の建造物が融合した絶妙な景色に、人類の英知や歴史に思いを馳せずにはいられないのではないでしょうか。カメラに収めたくなる素晴らしい景観です。
増上寺は今からおよそ600年くらい前の室町時代、明徳4年(1393年)浄土宗第八祖酉誉聖聰(ゆうよしょうそう)上人によって開かれました。江戸時代には増上寺の前を通りかかった徳川家康公が、僧と出会ったことがきっかけで徳川家の菩提寺となります。徳川家の隆盛とともに、日本有数の寺院となり繁栄しました。
増上寺に安置されている黒本尊と呼ばれる阿弥陀如来像は、家康公が陣中に奉持したと言われています。数々の戦いに勝利し徳川家を守りました。そのため、黒本尊は厄除けの神・勝ち運の神として知られています。増上寺のお守り「黒本尊の黒守り」は勝負運があがると人気です。
境内には徳川家将軍墓所や増上寺宝物展示室があります。徳川家とのゆかりが深い寺院なので、ゆっくりと時間をかけて歴史を感じたり景観を堪能してみてはいかがでしょうか。
増上寺の特徴
名称は三縁山広度院増上寺。山号・三縁山、院号・広度院、寺号・増上寺となります。浄土宗七大本山の一つです。浄土宗正統根本念仏道場として建てられました。増上寺の前身は、空海の弟子である宗叡が武蔵国貝塚(千代田区麹町近辺)に建立した光明寺です。
室町時代に酉誉聖聰上人が真言宗から浄土宗に改宗し、寺号を増上寺にしました。増上寺は貝塚から一度日比谷に移築しましたが、江戸城の改修に伴い現在の場所に建てられました。
江戸時代には広大な敷地に120を超えるお堂と、100件以上もの学寮がありました。当時は3,000人以上の僧侶がお念仏を唱えていたというから、現代では全く想像がつきません。ただただ、物凄いパワーに溢れたお寺であったことが分かります。
明治維新には上地令によって、敷地の広範囲が芝公園となり狭くなりました。それでも今もなお都心でかなりの敷地面積を持つお寺です。
それから増上寺は江戸城の裏鬼門に建っており、江戸城を守っていました。江戸城の鬼門には上野の寛永寺を配しています。天下泰平の世になったのは、江戸に風水学を取り入れたからとも言われています。その増上寺境内にも鬼門を守る鎮守として、熊野神社(ゆやじんじゃ)が建立されています。日本人は昔から目に見えない神仏や風水学などを、大切にした文化であったことを実感します。またそうして精神性を高めていたと思うと、背筋が伸びる思いです。
増上寺の表門として大門がありますが、上地令で寺院縮小され当時の東京府に寄付。現在は区道上に大門は建っています。三解脱門(三門)の前が日比谷通りになっているので、表門のように見えますが三門は中門です。巨大で壮観な朱塗りの三門をくぐりぬけ大殿本堂までの道のりは、極楽浄土を表しています。
大門から大殿本堂までの距離およそ108間、三門から大殿本堂までの距離およそ48間あります。108の煩悩を解脱、阿弥陀仏の48願と数字にもこだわっていす。大殿本堂を上る階段は25段は25菩薩を、参道から大殿本堂までの階段は18段は阿弥陀仏本願第18願を意味しています。本堂へ続く参道の長さや階段数まで、ご本尊の阿弥陀如来の教えをしっかりと取り入れて信仰の深さを知ることができます。
増上寺のご本尊
ご本尊は阿弥陀如来・南無阿弥陀仏です。浄土宗の開祖・法然は、平和を願いひたすら念仏を唱えれば誰でも平等に極楽浄土へ往けると教えました。自分が悪人であると自覚した者こそ、念仏を唱えれば阿弥陀仏に救われるとも教えました。その分かりやすい教えから、公家や武士のみならず庶民にも、大きな希望を与えました。人間は煩悩のかたまりで不完全ですから、法然の教えは物凄い救済ですね。
そんな中で伝統的な仏教の反感により、法然は流罪にされていますが、弟子たちの布教により浄土宗は発展してきました。浄土宗発展のための拠点として、そして徳川家の手厚い保護もあり増上寺は繁栄しました。家康公も平和を願い厚く信仰していたので、天下統一を果たすことが出来たのでしょう。
また増上寺には西向聖観世音菩薩(にしむきせいかんぜおんぼさつ)の辻堂もあり、安産・子育てを願う石像も安置されています。そして鬼門を守る熊野神社のご祭神として、熊野三所権現が祀られています。家津御子大神(けつみこのおおかみ)・大己貴命(おおなむちのみこと)・伊弉諾尊(いざなぎのみこと)の三柱です。
増上寺のご利益
勝運・厄除け・諸願成就・交通安全・家内安全・安産子育てなど多岐にわたりご利益があります。とりわけ黒本尊は、家康公が常に奉持していた阿弥陀如来像だけあって、勝運・厄除けのパワーはとても強力です。
黒本尊の黒守りは人気となっています。黒い生地にシルバーで勝運とあり赤い紐が付いて、目を引く素敵なお守りです。このお守りを肌身離さず持ち、黒本尊のパワーにあやかりたいですね。西向聖観世音菩薩は、安産・子育て開運としてご利益があります。
増上寺のどこが見どころか?
増上寺は東京観光のスポットとして組み込まれるなど、見どころが満載です。まずは国の重要文化財に指定されている三解脱門です。建築様式は三戸二階二重門で入母屋造で、東日本一の大きさを誇る門です。朱漆塗で美しく荘厳で見応えがあります。
そして三解脱門をくぐると、堂々と構えた大殿本堂があります。本堂は明治時代に2度の火災と昭和時代の空襲に遭い、現在の本堂は昭和49年に再建されました。本堂は階段を上った二階にあります。室町時代に作られた立派な金色のご本尊・阿弥陀如来が祀られ、両脇には高祖善導大師と法然上人の像も祀られています。
また本堂の地下室には宝物展示室があります。展示室で目を引くのは、イギリス王室所蔵の台徳院殿霊廟模型です。この霊廟は戦火で焼失するまでは国宝でした。模型は細部まで精密に美しく作られています。
その本堂の北側には安国殿があります。このお堂は本堂が戦火で焼失した際の仮本堂で、本堂再建後は安国殿となりました。平成23年に老朽化のためと、法然上人800年御忌を記念して新しく建立されました。安国殿には黒本尊が祀られていますが、秘仏で普段はお目にかかれません。年に3度のみ(正月・5月・9月の15日のみ)御開帳・黒本尊祈願会が行われます。家康公が成し遂げた天下泰平、安らかな国づくりを祈願してたてられた安国殿。今でも人々の厚い信仰をあつめています。
それから安国殿の奥に徳川家墓所があります。二代秀忠公、六代家宣公、七代家継公、十二代家慶公、十四代家茂公が埋葬されています。
他にも側室や子女が合祀されています。墓所入口には青銅製の鋳抜門があり、旧国宝の数少ない遺構です。葵の紋が入った重厚な門には、上り龍と下り龍が鋳抜れています。徳川家の墓所とあって、江戸時代の国宝級の豪華絢爛な墓所であったことが想像出来ます。
本堂の南側には光摂殿(こうしょうでん)があります。平成12年に講堂・道場として建てられました。光摂殿3階は大広間となっていて、各天井の天井絵はなんと120人もの現代画家によって描かれています。日本の四季草花をイメージした美しい天井絵は、是非見逃さずに鑑賞して頂きたいです。
安国殿横には西向聖観世音菩薩が安置されています。子育て安産の開運スポットで、その脇には可愛らしい千躰子育地蔵尊(せんたいこそだてじぞうそん)が並んでいます。1975年頃からお地蔵様を奉納するようになり、今では1,300体ほども奉納されています。
増上寺には見どころがたくさんあり少し休憩したい時は、境内に芝縁(しえん)というお休み処があります。旬の食材を使った体に優しいおばんざいやランチを味わうことが出来るのでお勧めです。
増上寺の一番パワーのある場所
増上寺で一番パワーがある場所は、黒本尊が祀られている安国殿と言われています。安国殿前の常香炉(じょうこうろ)で体に煙をあて、邪気を払って力強いパワーを頂きましょう。増上寺は参道から本堂までの間だけでも、パワーを頂ける有り難い作りになっています。
また旧境内である、芝公園の中にある芝丸山古墳や芝東照宮近辺は都内でも有数のパワースポットで知られています。古墳は5世紀後半頃の豪族のものと言われています。そして、芝東照宮は家康公が埋葬されています。増上寺・芝公園一帯は昔から元々、豪族や家康公などの権力やエネルギー・力強いパワーが満ち溢れていたのです。
そして現在、東京タワーなど高い建物は天からのパワーを受けやすく、東京湾からの海のパワーとが合わさって更に強いパワースポットとなっているのですね。都心でありながら、春には梅や桜の綺麗な景色が見られます。散歩しながら四季折々の景色を味わいつつ、存分にパワーを頂きましょう。
ライター 梅花桜花
基本情報
住所:〒105-0011 東京都港区芝公園4-7-35
Tel:03-3432-1431
アクセス:
・都営地下鉄 芝公園駅から徒歩で3分
・都営地下鉄 御成門駅から徒歩で3分
・都営地下鉄 大門駅から徒歩で5分
・JR線東京モノレール 浜松町駅から徒歩で10分
・東京メトロ日比谷線 神谷町駅から徒歩で10分