豊漁・航海安全を願う人々を見守る厳島神社
北海道函館市弁天町に、厳島神社が鎮座しています。厳島神社は、海の街・函館にふさわしく、海上の安全を守護する神として人々に篤く崇拝を受けています。古くから海の守護神であり、海上安全を祈願する漁業者や商人などから信頼を得ています。境内には、函館山七福神「弁財天・恵比寿堂」が鎮座しています。
函館市内を結ぶ路面電車は、西部地区から湯の川温泉にかけて走行しています。厳島神社は、電車の終点駅・函館どつく前駅から歩いて1分ほどの所に鎮座しています。函館どつく前駅を降りると、目の前に厳島神社が見えます。閑静な境内には、こじんまりとした落ち着いた社殿が建ち、参拝者を迎えてくれます。
初詣で人気の厳島神社は、多くの参拝者が訪れます。そのため、大晦日の深夜には函館市電が初詣無料電車を運行し、さらにアクセスしやすい神社となっています。
昔は、厳島神社の目前には海が広がっていました。そのため、海の神・市杵島姫命(いちきしまひめのみこと)が祀られています。市杵島姫命と弁財天は同一視されることもあり、昔は厳島神社は「弁天社」と呼ばれていました。弁天町という町名は、この厳島神社が由来になっています。
厳島神社と言えば、有名な広島の厳島神社を思い浮かべる人が多いと思います。しかし、厳島神社にも歴史があり、静かで落ち着いた雰囲気はとても魅力的です。
お正月になると全国各地で、多くの人々が七福神巡りを行います。函館でも、函館山のふもとの七福神を祀る社寺を巡拝しながら歩く「函館山七福神巡り」があります。厳島神社の境内には「弁財天・恵比寿堂」が鎮座し、函館山七福神巡りの神社の一つとなっています。弁財天が祀られた厳島神社は、巡拝スポットとして人気です。
この七福神巡りは、新年の元旦から7日までの間(または15日まで)に巡拝します。室町時代に京都で始まった習わしは、全国各地へと広がっていきました。函館でも七福神巡りの習わしは古く、江戸時代の末期には行われていました。北海道の函館だけは松前藩などがあり、昔から日本の領土であったこともハッキリと分かりますね。
古くから函館の人々を見守り、小さいながらもパワーのある厳島神社に、参拝してみてはいかがでしょうか。
厳島神社の特徴
厳島神社の創建は、江戸時代前期と言われています。函館市内に鎮座する亀田八幡宮の神職が、漁期に来て豊漁を祈願したのが始まりと言われています。かつては、厳島神社は弁天社と呼ばれていました。明治4年に市杵島(いちきしま)神社と改め、さらに厳島神社と改称されました。
弁天社は、江戸末期には40社を超えるほど祀られていたと記録に残されています。北海道の港町である松前を始め、石狩・増毛・紋別など各地で弁才天や市杵島姫命が祀られました。また鎮座地も何度か変わり、海の中に島を作り祀られたこともありました。幕末には、現在の地に遷移しました。
現存する社殿は、明治40年の大火があり、大正時代に入ってから建立されたものです。現在は、神社の前に道路があって車や路面電車が走っています。しかし、古地図によると神社の前には海が広がっていたようです。海の安全を祈願する漁協者や船乗りのために、厳島神社は海を向いて建っていたこともわかります。
厳島神社の境内には、寄進された貴重な遺物が多く残されています。1823年に寄進された手水石鉢、1837年に加賀の廻船主たちにより寄進された鳥居、1854年に海上の安全のために奉納された方位石などがあります。これらの遺物から昔から海の守護神として、地元の漁業者だけでなく、松前・北陸・大阪など遠方の商人からの崇敬をも得ていたことを知ることができます。
また、この時代には船を使って遠方から物資の運搬をしていたことも分かります。北海道には開拓の歴史がありますが、江戸時代には海沿いは比較的早くから開けていたのですね。
厳島神社のご祭神は「市杵島姫命」(いちきしまひめのみこと)です。境内には、函館山七福神の神社「弁財天・恵比寿堂」も鎮座しています。
北海道は明治時代になるまで、函館の周辺のみが松前藩として日本が統治し、他は日本の領地ではありませんでした。函館の歴史はかなり古く、15世紀の室町時代にまで遡ります。函館に、河野政通(こうのまさみち)という武将が本土より移住し、四角い箱の形をした館を築いたことから「箱館」と呼ばれるようになりました。
その後、明治に「箱」という閉じ込められた字は良くないとされ、「函」という字に変わりました。中国の名高い関所・函谷関から取った字で、同じように栄えるようにとの意味がこめられています。
河野氏が開いた函館は昔から、漁業や本土と船を使って物資の供給などをしていましたので、海の神・航海の神が祀られた厳島神社は重要な神社でした。厳島神社は今でも、豊漁・航海安全などを願う函館の人々をずっと支え見守っています。
厳島神社のご祭神
ご祭神
市杵島姫命 海の神
八重事代主命(やえことしろぬしのみこと) 航海の神
厳島神社には、2柱が祀られています。
境内社
弁財天 航海安全・知恵の神・芸能の神
恵比寿 豊漁・厄除解除・金運
弁財天は芸能の才や福徳財産・航海安全・知恵を授ける神であり、恵比寿は事業繁栄・豊漁・縁結び・厄除開運・金運を授ける神です。元々はインドの水辺の女神である弁財天は、琵琶を奏でる姿から芸妓上達の神、そして水は浄める力を持ち金運・財運を司る女神と言われています。
厳島神社のご利益
厳島神社(箱館)では、福徳財産・航海安全・事業繁栄・豊漁・縁結び・厄除開運・金運上昇などのご利益をいただけます。弁財天が刺繡された素敵で珍しいお守りも授与されます。
厳島神社のどこが見どころか?
厳島神社の境内は、スッキリとした清々しいご神域となっています。ご神木のいちょうの木は推定150年ほどの古木で、神聖な木として凛と立っています。
厳島神社の入口には、立派な石造の鳥居と弁財天の文字が見えます。石造鳥居は1837年に寄進された江戸時代の貴重な鳥居です。明治36年に建立された珍しい六角雪見灯籠もあり、土台には大阪・京都の商人の名が連なっています。
厳島神社は弁財天が祀られていて、「函館山七福神巡り」の巡拝スポットとして人気があります。「函館山七福神巡り」は、江戸時代の末頃から始まったという説があります。この頃は、町民文化が盛んであり「七福神祭」が行われたという記録が残されています。
函館山のふもとには、弁天町・旧大黒町・旧恵比須町などと、七福神の名が使われている町が存在します。函館の人々にとって、七福神の存在は身近だったのですね。
海の神・航海の神が祀られた厳島神社に、弁財天・恵比寿も祀られて、人々の心の拠り所であったことが分かります。厳島神社に足を運んで、静かで心安らぐ時間を過ごしてみてはいかがでしょうか。
厳島神社の一番パワーのある所
厳島神社は、境内全域が清らかな気で満ちています。海からのパワーと山からのパワーがぶつかり合い、パワーが溢れています。厳島神社は小さな社ですがパワーがありますので、参拝に訪れてご利益をいただきましょう。
ライター 梅花桜花
基本情報
住所:〒040-0051 北海道函館市弁天町9番9号
TEL:0138-23-0713
市電:「函館どつく前」電停下車 徒歩1分