開成山大神宮は開拓者を支えた「東北のお伊勢さん」
福島県郡山市中心部の緑の杜に、開成山大神宮が鎮座しています。「東北のお伊勢さん」として親しまれ、初詣などは多くの参拝客で賑わいます。
開成山大神宮のある郡山市は、「水と緑のきらめく未来都市」として発展を遂げ、「水と緑の文化を育む“水の郷百選”」に指定された観光名所となっています。また、東北地方での経済規模では、宮城県仙台市に次ぐ2位、人口は仙台市・いわき市に次ぐ3位となっています。農業でもブランド米「あさか舞」など、米の生産量は県内トップで、野菜や果物の産地としても知られています。
郡山市の発展は開拓者のお陰であり、その開拓者の心の支えとして見守ってきた開成山大神宮のお陰でもあります。また、開拓者なくして開成山大神宮を語ることはできません。
開成山大神宮の始まりは明治時代で、開拓民として安積地方に入った人々の心の拠り所として、伊勢神宮より分霊をいただき創建されました。開成山大神宮が創建された当時は、今では考えられないほどに荒地が広がっていました。そのため、そのような地に伊勢神宮の分霊をいただくことは至難の業だったようです。
開成山大神宮の前には、美しい桜の名所として知られる開成山公園があります。灌漑用の池として造られた五十鈴湖の周りに都市公園として整備されました。開成山公園には、安積開拓の発祥の地として「開拓者の群像」が建っています。そこには、安積開拓の父・中條政恒、大久保利通、ファン・ドールンなどの人物像が並んでいます。
ファン・ドールンとはオランダの土木技術者で、国営事業として安積疏水を作るために呼ばれた人です。国を挙げて安積の開拓・疎水の成功に導こうとの強い思いが伝わってきます。開拓者によって作られた安積疏水は大成功を収め、不毛の地に潤いを与え、その後の郡山市の大きな発展をもたらしました。
開成山大神宮は、激動の時代である明治維新以降の、開拓者たちをはじめとする多くの人々や、移り変わる街を見守ってくださった神社です。開成山大神宮では、先人たちの夢見た豊かな大地があることへの、深い感謝を忘れずに参拝したいですね。
開成山大神宮の特徴
開成山大神宮は、明治9年に創建されました。珍しいことに、明治8年10月には既に本殿と拝殿が造営されていました。それから、人々がご祭神をどの神にするのか協議しています。そして、人々は伊勢神宮の神を分霊していただこうと決定しました。しかし当時、伊勢神宮から神を分霊したことがなく、明治政府の教部省では慎重な検討を重ねます。
明治維新の戊辰戦争では、福島県の会津藩・二本松藩などの各藩は幕府側として戦いました。そのため、朝廷の敵として汚名を受けていたのです。そのような状況を明治天皇は憂いて、皇室の祖先神・天照大御神を福島の地に祀ることを快くお許しくださり、開成山大神宮に分霊されることになりました。開成山大神宮は、安積地方の開拓者の心の拠り所として篤く崇敬されてきました。
江戸時代までの安積地方は、大槻原と呼ばれる180百万坪もの荒れ果てた原野でした。水を確保することが難しい不毛の地でもありました。明治政府により殖産興業の一環として、安積地方の拓地植民・士族授産の計画が立てられます。郡山の商人・阿部茂兵衛ら24名の出資で「開成社」という開墾会社を設立します。
開拓者として、元二本松藩士や近郊の農民の次男や三男などが開墾を進めました。また遠方の旧久留米藩士、岡山・土佐・鳥取・棚倉・会津・松山・米沢の元藩士も入植しています。耕作技術がない上に肥沃でない土地などが重なり、収穫が乏しく移住してきた士族は困窮を極めます。開拓者は身分・出身地の違いから、諍いも多くまとまりがありませんでした。
開拓事業を円滑に進めるには、愛国心を奮い立たせ心を一つにすることが肝心として、明治6年に制定された国民の祝祭日「神武天皇祭」「天長節」に合わせ遥拝所が造られました。遥拝所は「離れ森」と呼ばれていた眺のよい小高い丘を「開成山」と名付けて、頂上にお祭り広場としての遥拝所が置かれました。
春と秋の二回の遥拝式には、安積地方36の村が参加し3日間に亘り、6万人もの人出で賑わったそうです。これが開成山大神宮の始まりです。明治天皇は開成山大神宮を、明治9年の奥羽御巡幸の際に御親拝になられました。
明治11年に、国営事業「安積原野開墾」が着工されました。明治12年「猪苗代湖疏鑿起業式臨時祭」には伊藤博文内務卿、明治15年の「猪苗代湖疏鑿竣功報告祭」・「通水式」には岩倉具視右大臣などが、開成山大神宮に参列し祈願・祭典が斎行されています。
開成山大神宮の本殿には、伊勢神宮の遷宮の御用材の撤材が用いられ、木の温かみが感じられる立派な造りとなっています。現在の拝殿は、平成3年に御分霊奉遷150年と皇紀2650年と平成の御大典を奉祝し、青森県産の檜葉で造営されました。伊勢神宮のような拝殿に造られています。境内にある桑野宮は、明治8年に造営された旧本殿を移築したものです。本社三神の荒魂が祀られています。
開成山稲荷神社には、倉稲魂神(うかのみたまのかみ)が祀られ、農業・商業などの諸産業と開運の守り神として信仰されています。祖霊社は、昭和62年に造営され、開成山大神宮神徒会の代々の霊神が祀られています。神楽殿・宝物殿は共に、昭和50年、御分霊奉遷100年を奉祝して造営されました。開成山大神宮は、歴史は比較的新しい神社ですが、開拓者にとって重要な意義ある神社であったことが分かります。
開成山大神宮のご祭神
主祭神
天照大御神(あまてらすおおみかみ)
豊宇気毘売神(とようけびめのかみ)
神倭伊波礼琵古命(かむやまといわれひこのみこと)
開成山大神宮のご利益
開成山大神宮では、開運・厄除・諸願成就・安産祈願・初宮詣・七五三・社運隆昌・商売繁昌・作業安全・家内安全・身体健全・交通安全・学業成就などのご利益が授かれます。
開成山大神宮のどこが見どころか?
緑に囲まれた美しい開成山大神宮は、桜祭りや初詣などには多くの参拝客が訪れる人気の神社です。清々しい気が流れ、心が整い開運パワーを頂くことができます。境内社である開成山稲荷神社の参道には、奉納旗がずらりと並んでいます。金運アップのパワースポットと言われていますので、忘れずに参拝してみてください。
宝物殿には、伊勢神宮から御神宝として贈られた槍や刀なども展示されています。伊勢神宮や明治天皇からの特別な計らいをいただき創建された開成山大神宮は、力強いパワーがあります。
開成山大神宮を参拝した後、向かいにある開成山公園を散策するのもお勧めです。広々とした公園には、噴水のある大きな池があり、桜をはじめ綺麗な花が植えられています。
開成山公園の桜は、平成28年に日本遺産の構成文化財として認定されました。園内には、日本最古の染井吉野が植えられています。桜の名所でもある開成山公園には、桜の花が咲いている頃に訪れると、よりパワーを感じられることでしょう。
またバラ園も見事で、昭和46年に市内の遠藤栄一氏により寄贈されたバラなど400種800本が咲き誇ります。見頃の6月・10月には美しく優雅なバラに癒されることでしょう。今では市民の憩いの場として親しまれる開成山大神宮と開成山公園を、ゆっくりと散策しながらパワーをいただきましょう。
開成山大神宮の一番パワーのある所
開成山大神宮は比較的新しい神社ではありますが、東北のお伊勢さんと呼ばれるほど、境内は力強いエネルギーに満ちています。開成山大神宮で一番パワーがあるのは、参道といわれています。
開成山大神宮は、開拓者たちの強い思いによって分霊・勧請された神社です。今でも人々に親しまれ、人々や街の発展を見守り続けている、力強い開成山大神宮にお参りしてみてはいかがでしょうか。
ライター 梅花桜花
基本情報
住所:〒963-8851 福島県郡山市開成3丁目1-38
TEL:024-932-1521
アクセス:
・JR東北本線 郡山駅から バス約15分
「開成山」 バス停から 徒歩5分
・東北自動車道 郡山ICから 車で15分