出世の石段で有名な愛宕神社
東京、港区の都会の一角に佇む愛宕神社。木々が生い茂り自然が残る愛宕神社には、毎日多くの人が参拝に訪れます。境内には出世のご利益で有名な「出世の石段」と呼ばれる階段があります。「出世の石段」と呼ばれるようになった由来や、江戸の町を救った秘話など見どころポイントがたくさんあります。400年以上昔からこの東京を見守ってきたパワースポット、愛宕神社を探訪してみてくださいね。
愛宕神社ってどんなところ?特徴は?
愛宕神社は標高25.7mの愛宕山の山頂に建てられています。この愛宕山は東京の23区内としては珍しく自然に形成された山であり、四季折々の豊かな自然が訪れる人を楽しませてくれます。現在は高いビルが立ち並び視界を遮りますが、当時はここから江戸の町を一望することができるほど見晴らしがよく、遠く品川の海や船の帆なども見えたそうです。
愛宕神社の特徴はなんと言っても全国で、900~1,000社ともいわれるその数です。全国各地に広がった理由は、愛宕神社の祭神が「火伏の神」に由来するものであり、当時の人々の信仰厚さが伺い知れます。
愛宕神社の歴史
愛宕神社は、都会の一角にありながら豊かな自然を残し昔の風情を感じます。この神社にどのような歴史と町に住む人々の願いが込められていたのでしょうか。その成り立ちやご利益の由縁などについて、いろいろな興味深いものがあります。
愛宕神社の成り立ち
愛宕神社は江戸時代が開かれた慶長8年(1603年)に徳川家康により、戦勝の神として愛宕権現を勧請し創建されました。以後武士にとっては「戦勝祈願の神」となり、庶民にとっては「火伏せの神」として江戸の人々の信仰の対象となっていきました。
「出世の石段」の秘話
三代将軍徳川家光が愛宕神社の下を通りかかった際、愛宕山に見事な梅が満開となっており、家光は「馬で駆け上がり梅を取って参れ」と命じました。
けれど愛宕山に咲く梅を取ってくるには、神社の石段を登らなければなりません。石段の勾配は40度という急勾配であり、それが86段も続きます。そのため家臣たちは誰一人この石段を馬で駆け上がろうという者はいません。
ただ一人四国丸亀藩士の曲垣平九郎(まがきへいくろう)という者が、馬に乗ってこの石段を駆け上がり見事梅の枝を家光に差し出したと伝えられています。家光は平九郎の馬術の腕を称賛し「日本一の馬術の名人」と讃えました。この話はすぐに日本中に広まり、平九郎の名が知れ渡ったと伝えられています。これによって愛宕神社正面の石段は「出世の石段」と呼ばれるようになったのです。今日でも出世を願うサラリーマンが多く訪れる場所になりました。
江戸を守った愛宕神社
「出世の石段」として有名な愛宕神社ですが、実はそれ以上に愛宕神社が重要な役割を果たした歴史がありました。それが一滴の血も流さなかった「江戸無血開城」と言われているものであり、西郷隆盛と勝海舟が会談の最中訪れたこの愛宕神社での言い伝えです。
それは明治の幕開け1868年、京都で戦いを起こした15代将軍徳川慶喜が江戸に逃げ帰ったのを追い、西郷が江戸に総攻撃を決定しました。そうなると江戸の町は火の海となってしまいます。この時に徳川慶喜に仕える勝海舟が立ち上がり、西郷と会談の約束を取り付けます。勝海舟と西郷隆盛は三田の屋敷での交渉の最中、この愛宕神社を訪れます。その時に愛宕神社から見た江戸の町を「戦火で焼けつくしてしまうのは忍びない」という事で平和的な解決を決断したというお話です。
愛宕神社が江戸の防火・防災の神として火産霊命を祭っていたということも偶然ではないかもしれませんね。「防火の神様が江戸を戦火から救った」と伝えられています。
十二烈士女の碑
日本の敗戦が決まった昭和20年8月15日、降伏に反対の12名が愛宕山に籠城。全国に決起を呼びかけたが失敗に終わる。その後警察隊が動員され、突入した際にこのうち10名が自決。のちに残された夫人2名も自決、計12名がこの地で亡くなりました。
愛宕神社のご祭神
主祭神
火産霊命(ほむすびのみこと)
火を司る神様、神話ではイザナミとイザナギの子として生まれた。出産のときのやけどがもとでイザナミは死んでしまう。この時に怒ったイザナギに火産霊命は首をはねられてしまい、その遺体から鉱山を象徴する神々、工業を象徴する神々など生まれたという。このため金運や鍛冶・産業、防火などにご利益があるとされる。
配祀
罔象女命(みずはのめのみこと) 水の神
火産霊命を産んだときにできた火傷に苦しんでいたイザナミ。その苦しみの中、イザナミの尿から生まれたのが罔象女命です。「水の精」とも言われている。
大山祇命(おおやまづみのみこと) 山の神
イザナミとイザナギの間に生まれた山の神。この大山祇命の娘は天皇の祖神になるニニギの命(ニニギノミコト)に嫁いだ木花咲耶姫(コノハナサクヤヒメ)です。この後に木花咲耶姫は天照大神の子孫を産みます。
日本武尊(やまとたけるのみこと) 武徳の神
第12代天皇の第二皇子として生まれる。ピンチを救う伝説的な英雄とも言われている。
将軍地蔵尊
普賢大菩薩
愛宕神社のご利益
防火・防災
主祭神が火産霊命(ほむすびのみこと)であり火の神様であることから防火・防災、郷土守護のご利益があると言われています。
印刷・コンピューター関係
日本神話の中にあったように、火産霊命が亡くなるときに鉱業・産業などの神々が生まれていて、その飛び散った血から生まれた神が「剣」と「雷」を象徴する最強の武神とされています。「剣」は鍛冶であり産業を、「雷」は電力であり印刷・コンピューター関連へと通じるものとされてきました。このご利益があってか、愛宕神社の周りにはそれらの関連会社が多くあり参拝者も多かったようです。
縁結び・芸能関係
火伏せの神様は、火を伏せる=防火の意味とは別に「悪縁を絶ち切ったうえで新しく良縁を成す」というご利益があるとされています。
愛宕神社の見どころのポイント
隔年で出世の石段祭が行われ、御神興が急勾配の石段を一気に駆け上がり一年の感謝を神様に捧げるそうですが、この石段を御神輿で駆け上がるとはすごいですね。
神社内には「招き石」と言われる福を招く石があります。これは「撫でた人に福が来る」と言われる不思議な形をした石です。
毎年6月にほおずき市があり、社殿前の茅の輪をくぐって参拝すると「千日分のご利益がある」と言われています。縁日で売られているほおずきはお祓い済みのものが並んでいるそうです。
愛宕神社の祭典行事
・歳旦祭 1月1日
・七草火焚き祭 1月7日
・節分お福分け祭 2月3日
・お花見 3月下旬~4月上旬
・千日参りほおずき縁日 6月
・出世の石段祭 隔年9月
・除夜祭鏡開き式 12月31日
愛宕神社の特にパワーがある場所
愛宕神社といえば、やはり前述の出世の石段は見逃せません。大鳥居の前で一礼したら、いよいよ石段に向かいます。
一段毎の高さもあり、あまりの急勾配に怖いと感じる方もいらっしゃいますが、そんな時は別ルートもあります。出世の石段が「男坂」と呼ばれるのに対し、「女坂」と呼ばれる比較的登りやすい階段もありますので、無理のないルートを選んでくださいね。
無事に出世の石段を登り終えたら、手水舎で手と口を清めてから社殿へ。「二礼二拍手一礼」で参拝し、主祭神の火産霊命に災いを祓っていただきましょう。最後に招き石まで巡れたらバッチリです。
まとめ
愛宕神社は歴史的にも貴重であり、様々に言い伝えられる物語を経て今に在るのですね。都心のオアシスのように、四季を通して楽しめるこの愛宕神社に癒されに来てみませんか。出世の石段は、今の競争社会を現わしているかのように厳しい急勾配が待ち受けていますが、出世のご利益にあやかってご主人や友達と、または一人散策しながら登られてみてはいかがでしょうか。
ライター・Shoko.S
基本情報
住所:東京都港区愛宕1-5-3
アクセス:
・東京メトロ日比谷線・神谷町駅より徒歩5分
・東京メトロ銀座線・虎の門駅より徒歩8分
・都営地下鉄三田線・御成門駅より徒歩8分
・JR 新橋駅より徒歩20分