熊野速玉大社

新宮市の町中に鎮座する熊野神社の総本宮「熊野速玉大社」
熊野速玉大社(くまのはやたまたいしゃ)は和歌山県新宮市にあり、熊野権現が最初に降臨した千穂ヶ峰のふもとにあります。「速玉」という名前の由来は、熊野灘へ流れ込む熊野川に近い立地ということもあり、黒潮の怒涛を切り裂く水しぶきが、船のへき先で聖なる飛沫となりこれを速玉と呼んだともいわれています。千穂ヶ峰を背に熊野川が近くに流れる大自然のパワーに惹かれ手を合わせる人々の姿は、昔も今も変わることはありません。

今回は、全国に数千社といわれる熊野神社の総本宮で、歴史と由緒ある熊野速玉大社をご紹介します。

 

熊野速玉大社の歴史
はじまり
熊野信仰は原始的な自然崇拝が原点であり、神倉山は千穂ヶ峰の一部でその山頂には、ご神体「ゴトビキ岩」が祀られています。神倉山には最初、熊野三神である熊野速玉大神(くまのはやたまのおおかみ)、熊野夫須美大神(くまのふすみのおおかみ)家津美御子大神(けつみみこのおおかみ)が降臨しましたが、128年(景行天皇58年)に、社殿を建立してお迎えしたことが熊野速玉大社の創始とされています。このことから、最初の降臨地の神倉山にある神倉神社を「元宮」、新たに遷した熊野速玉大社を「新宮」と呼ぶようになりました。

奈良時代の749~758年には、孝謙天皇から「日本第一大霊験所」の勅額を賜ります。これにより、熊野速玉大社は熊野三山の中で最初に「熊野権現」の称号を得ることになりました。ちなみに「熊野権現」とは、熊野三山に祀られる神で、本地垂迹思想(仏が世の人を救うため神に姿を変えこの世に現れた神仏同体の説)のもとで権現と呼ばれるようになります。

奈良時代末期になると、熊野速玉大神は、薬師如来とされ衆生の病気や苦しみを癒し、過去世の救済のご利益があるとされました。また、熊野夫須美大神は千手観音菩薩として現世利益を授け、家津美御子大神は阿弥陀如来として来世浄土へ導くと位置づけられるようになります。その後、山伏や熊野比丘尼(くまのびくに)らの活躍もあり熊野権現信仰は大流行し、数千に及ぶご分社が全国に祀られるようになり、熊野神社の総本宮とされました。

中世以降になると「ごんげんさん」の名で庶民の間で広く親しまれ、「蟻の熊手詣」の名のとおり熊野古道は大変な賑わいを見せます。原始的な自然崇拝から仏教体系と習合し、過去世救済、現世利益、来世加護を説き滅罪、甦りの地として、現在も最強のパワースポットになっています。

主祭神、ご利益
熊野速玉大社には全部で12の社殿があり、十八柱の神様が祀られています。主祭神は、「熊野速玉大神」別名イザナギノミコトと、その妻「熊野夫須美大神」別名イザナミノミコトです。ご利益は「富貴隆昌」(ふうきりゅうしょう)です。富貴隆昌とは、地位が上がり財産も増える意味があります。ステップアップを求め、新しいことに挑戦したい人などたくさんの人がご利益をもとめて、ここ熊野速玉大社を訪れています。

また、主祭神が日本の国を誕生させた夫婦の神様ということもあり、絶大な縁結びのご利益もあるとされています。カップルや女子旅で訪れる人を中心に、人気がある要因のひとつになっています。他にも交通安全、海上安全、先祖慰霊、病気平癒、災厄消除のご利益が頂けます。

 

熊野速玉大社の見どころ
神門
境内に入る手前にあり、朱塗りの大きな門が神門です。巨大なしめ縄が飾られ、「全国熊野神社 総本宮」の扁額が掲げられているなど威厳があります。

拝殿
神門を入りまっすぐ進むと拝殿が見えてきます。拝殿の奥には「速玉宮」(はやたまぐう)と「結宮」(むすびのみや)があり、主祭神をお祀りしています。これ以上奥には入れないので、拝殿で鈴を鳴らして手を合わせ、祈願します。まずは最初にここでお参りしましょう。

熊野神宝館
熊野神宝館には、国宝や重要文化財など武器武具類や蒔絵の手箱を含め、1200点もの古神宝類、室町時代の工芸の品々などが収蔵、展示されています。また、入口にはチェーンソーアートの第一人者で龍神村在住の城所啓二氏が制作した迫力ある弁慶像が建ち、こちらも見ごたえがあります。

猪目
熊野夫須美大神が祀られている「結宮」の屋根の上の千木には、4つのハートの形をした穴が開いています。この穴を「猪目」(いのめ)といいます。猪目とは、魔除けのおまじないのひとつであり、猪の目を由来にしていて防火、火除けの役目を果たしています。

熊野絵解き
中世の時代、熊野比丘尼(くまのびくに)達は、熊野曼荼羅(くまのまんだら)の絵解きなどをしながら全国へ行脚をして熊野信仰を広めました。比丘尼達が携えていた「熊野観心十界曼荼羅(くまのかんしんじっかいまんだら)について、熊野速玉大社では神職が解説してくれます。(所要時間20分ほど)希望される方は熊野速玉神社に問い合わせてみましょう。

 

熊野速玉大社の特にパワーがある場所
ご神木梛(なぎ)の木

神門の左手前に熊野権現の象徴として、昔から崇拝されていた大きな木があります。樹齢1000年近くあるとされる熊野速玉大社のご神木、梛の木です。平安時代、平清盛の嫡男、重盛が熊野三山の造営奉行をしていた頃に手植えしたものとされています。

梛の葉はとても丈夫で、なかなかちぎることができないため、それにあやかり二人の絆を強くしてくれるとして大変人気のある縁結びのパワースポットになっています。また、「梛」の言葉には災いを梛(な)ぎ払うという意味があり道中の安全を守るお守りとしても有名です。梛の葉を懐に入れて旅の安全を願い参拝することが、昔から習慣になっていました。旅行中の祈願をする場所としてもぴったりといえるでしょう。国の天然記念物にも指定されています。

 

熊野速玉大社の授与品
なぎ人形
授与品のひとつに「なぎ人形」があります。男女一対のかわいい柱掛け人形になっていて頭部はご神木、梛の実で作られています。縁結びや家内安全にご利益があります。

「千早ぶる くまのの宮のなぎの葉を かわらぬ千代のためしにぞ折る」の和歌が掛札に書かれています。藤原定家が、1201年(建仁元年)後鳥羽上皇の熊野御幸に随行した時に詠んだものです。梛の葉を折って参詣した往時の様子が伝わってきます。

きずな守り
自分の手で作るユニークなお守りもあります。自分が綴った願いと、お札、梛の葉を入れて大切な人に渡します。名前のとおり、大切な人との温かい絆が深く結ばれる意味が込められています。

吉兆
熊野速玉大社では、福神を迎えた木のことを吉兆といいます。縁起物の吉兆を節分に飾ると家内安全、疫病退散、商売繫盛などの幸福が訪れるとされています。みこや職員や、敬神婦人会の女性たちが、境内の山林でヤナギの小枝を採って赤、白、青などカラフルな直径約3センチの「もち花」や大福帳、小判、お守り、サイコロなどを付けて完成させます。2月3日の節分祭までに授与し、郵送も受け付けています。

特に近年は、福を呼び込み、疫病を祓うとされる吉兆を飾ることで、1日も早い新型コロナが収束し日常が戻ることを願って買い求める方が、多く見受けられます。

 

まとめ
同じ熊野三山である熊野本宮大社や熊野那智大社は自動車がないと参拝が難しい距離にありますが、熊野速玉大社はJR新宮駅から徒歩約15分と比較的近く、アクセスしやすいのが特徴です。市街地にありながら朱塗りの鮮やかな社殿と、境内にそびえるご神木、梛の木など人々を癒す聖地になっています。

2000年の歴史を通して古来から人々の心を引きつけてやまない熊野速玉大社で、悠久の熊野詣の心に触れてみてはいかがでしょうか。

 

ライターネーム/サクヤ凛

 

基本情報
住  所 新宮市新宮1番地
電話番号 0735-22-2533
営業時間 日の出~日没(授与所は8~17時)
定 休 日 無休
駐 車 場 あり(無料)
料  金 境内自由 神宝館拝観 500円
アクセス方法 JRきのくに線 新宮駅下車 徒歩15分
公 式 H P  kumanohayatama.jp

(新型コロナ感染防止のため変更がある場合もありますので、あらかじめ最新の情報をご確認ください。)

 

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