奇岩伝説が今も伝わる!尾道を一望できる千光寺
千光寺は、広島県尾道市にあり、「さくら名所100選」に選ばれるなど全国でも有名なお花見スポットです。また、春は桜のほかつつじ、初夏にはふじが、ピンクと紫色の花を咲かせるなど園内を彩ります。
小高い山には千光寺公園が広がり、山頂からは瀬戸内海を一望できるなど景観も抜群の所に位置しています。今回は、風光明媚な観光を楽しみながら、ご利益もいただけるパワースポット「千光寺」をご案内します。
千光寺の歴史
はじまり
千光寺は、尾道を代表する大宝山の中腹にあり、1,200年以上前に創建したと伝えられる古刹です。弘法大師・空海が806年に創建し、千光寺が衰退した時は平安時代の源氏の名将、多田満仲が再興させたといわれています。また、千光寺は瀬戸内海の絶景を一望できるとあって、多くの文化人がこの地を訪れています。頼山陽は、「六年重ねて来る千光寺」と漢詩に詠んでいます。
ご本尊・ご利益
ご本尊は、千手観音菩薩で宗派は真言宗です。聖徳太子の作品と伝えられ、33年に1度だけしか拝観できない秘仏とされています。昔より「火伏せの観音」と呼ばれ、火難除けに霊験あらたかとされてきました。
今ではご本尊にお願い事をすれば、あらゆる運が開けるといわれています。縁結び、病気平癒、家内安全、交通安全など、諸願成就や開運厄除のご利益があり、昨今は縁結びを祈願する方が多いようです。
千光寺の見どころ
本堂(赤堂)
本堂は、向島岩屋山の巨大な石と冬至の朝に一直線になるよう建立されたことが、近年の研究により、判明しました。天気が良ければ、ご本尊がご来光を浴びて輝く、神々しい光景を拝むことができます。
あえて断崖絶壁に本堂を建て、寸分の狂いもなく真正面に光が一直線に差し込むには、どれだけの正確な建築技術が古代の人々に備わっていたのか、謎につつまれ興味も深まります。本堂は珍しい舞台造りで、俗に「赤堂」と称されています。林芙美子の放浪記にも登場し、「赤い千光寺の塔が見える」と紹介されています。
鐘楼
唐づくりの「鐘楼」は、1890年に再建されました。断崖絶壁に建っているため、鐘楼からも絶景を一望できます。残したい「日本の音風百選」にも選ばれています。大晦日の除夜の鐘でも有名で、新年を迎える24時まで、数に限りなくつくことができるため、毎年31日の22時頃から整理券が配られるほどの人気です。
他にも民謡で「音に名高い千光寺の鐘は一里聞こえて二里ひびく」と謳われるほど、地元の人を中心に年の締めくくりに欠かせない存在になっています。
三十三観音堂
「三十三観音堂」は、1743年に建立されました。名前のとおり、33体の観音菩薩像が観音堂に安置されています。こちらの観音菩薩像は、関西の西国観音霊場の各札所から集められているため、三十三観音堂を参拝すれば、西国観音霊場を全てお参りした時と同じ功徳があるとされている、大変ありがたいお堂になっています。
また、三十三観音堂には「カチカチ数珠」があります。千光寺の名物の一つでもあり、お堂の正面の桜の木で作られています。「百八煩悩滅除大念珠」と幸せを念じてゆっくり引きます。すると、珠が「カチカチ」と音をたてて上から落ちてきます。煩悩を打ち消し、観音様のご守護を頂けるご利益がこのカチカチという音にあります。三十三観音堂にお参りの際は、ぜひカチカチ数珠も体験してみましょう。
鼓岩(ポンポン岩)
千光山は、花崗岩の大きな石が多く、古代より霊山と崇められてきました。その中の一つで頼山陽の碑の近くにある、巨石が「鼓岩」(つづみいわ)です。石で打つとポンポンと鼓のような音がするため、「ポンポン岩」とも呼ばれています。千光寺山は、花崗岩の良材が採石できるため、石材の切り出し場にもなっていました。
大坂城築城の際、豊臣秀吉の命を受けた毛利氏が千光寺山から採石して運んだと、亀山士綱の「尾道志稿」にも記されています。鼓岩も石垣として搬出しようとしましたが、あまりにも大きいため運ぶのを断念した、といわれています。岩に当時の楔(くさび)の跡がしっかり残されています。
また、山上の巨石は、古代は磐座(いわくら)だったとされ、巨石をご神体とする自然崇拝が根付いていました。多くの巨石や奇岩にその名残を見ることが出来ます。
くさり山
本堂の裏にくさり山と呼ばれる、巨石がたくさんあるエリアがあります。くさり山には石鎚蔵王権現(いしづちざおうごんげん)が祀られていて、大正15年に鎖が取り付けられると頂上まで登れるようになりました。
しかし、戦争が激しくなった昭和18年、鐘と共に鎖が供出されると、いつしかわすれられた存在になっていきます。平成15年頃に、住職さんが62年ぶりに鎖を取り付けて整備をして、平成17年には、参拝客も登れるようになりました。
天狗の鼻のような大きな奇岩や、神の使いである烏天狗が描かれた岩もあります。このような巨大な岩は、昔は信仰の対象とされ、特に尾道は大きな岩が多くあったため、僧侶の修行の場とされていました。
鎖場でプチ修行に挑戦してはいかがでしょう。体力に自信がなければ鎖を使わなくても、横から上がっていくこともできます。頂上には小さな祠があり、石鎚山のご本尊がお祀りされています。お参りした後、くさり山の頂上からの眺めを堪能しましょう。頂上まで登り切った達成感とあいまって、空と海が織りなす壮大な自然美に、清々しい気持ちに満たされるのではないでしょうか。
梵字岩(ぼんじいわ)
精巧な技術で、岩の円形の中に梵字が彫られています。一見、模様のように見えますが、光明真言、大日如来真言の梵字が刻まれた光明真言曼荼羅になっています。
千光寺で特にパワーのある場所
玉の岩
「玉の岩」は、本堂近くにある千光寺のシンボル的存在です。千光寺の名前の由来にもなり、現在も語り継がれている玉の岩の伝説があります。玉の岩は、男性の和装姿の頭にかぶる烏帽子(えぼし)に似ていることから烏帽子岩とも呼ばれ、周囲50メートル、高さ15メートルあります。その頂上に昔、「宝玉」があったといわれています。
夜になると、宝玉は海上を遥か彼方まで照らし、漁師などは特に灯台の代わりにするなど、地元の人々は重宝していました。ある時、宝玉の存在が異国の皇帝にも知れ渡ることになり、皇帝の家来により奪われてしまいます。
ところが、家来が宝玉を船に乗せ持ち帰ろうとしたところ、誤って海に落とし、宝玉は海底深く沈んでしまいました。このことから、その近く一帯(尾道市街地)を「玉の浦」と称するようになったそうです。
烏帽子岩の頂上には、くりぬかれたような宝玉の痕跡があります。光る宝玉がなくなってしまったので、代わりにかがり火が焚かれていたそうです。現在は、宝玉を再現した玉が置かれていて、辺りが暗くなると優しい赤・黄・緑の3色の光が灯ります。尾道を散策する際は、夜の千光寺を眺めてみるのもおすすめですよ。
まとめ
戦時中の空襲を逃れた尾道は、歴史を感じる街並みが今も残されています。神聖な巨石のある山々と、景観の美しい港町が今も昔も人々を魅了し続け、毎年多くの観光客が訪れています。その中心にある千光寺のパワーを、ぜひ体感してみましょう。
ライターネーム/サクヤ凛
基本情報
住所:〒722-0033 広島県尾道市東土堂町15-1
電話番号:0848-23-2310
FAX番号:0848-23-8844
利用料金:無料
アクセス(電車):
・「JR尾道駅」より「ロープウェイ山ろく駅」まで徒歩約15分
・ロープウェイ利用。その後「文学のこみち」を徒歩10分
アクセス(車):
・千光寺公園駐車場利用。駐車場より徒歩10分
・駐車料金 各1日 普通車600円 マイクロ1,500円 大型2,000円
公式HP: http://www.senkouji.jp/
(最新の情報は公式HPでご確認ください。)
※記載した金額等は2022年7月時点のものであり、変更の可能性があります。