塩の強力な浄化パワーに包まれる鹽竈神社
鹽竈神社は、宮城県塩竈市の小高い一森山(いちもりやま)に鎮座しています。「しおがまさま」として親しまれ、地元の人々はあらゆる祈願において参拝に来るほどです。
境内から千賀の浦(塩釜湾)、松島、そして遠くに金華山を眺められます。千賀の浦は平安時代の歌枕として多く用いられ、昔から憧憬の地・絶景スポットでした。初日の出のスポットにもなっています。
また桜の名所としても知られ、毎年4月中旬に「しおがまさま神々の花灯り」が行われます。参道や境内がライトアップされたり、雅楽や琴の演奏が行われます。境内には「鹽竈桜」と呼ばれる桜があり、国の天然記念物に指定されています。八重で薄桃色の花を咲かせる鹽竈桜は、鹽竈神社でしか見られないとても貴重な美しい桜です。
鹽竈神社は陸奥国(福島県、宮城県、岩手県、青森県)の一之宮として、中世に奥州藤原氏、江戸時代には仙台藩伊達家などから篤く信仰されてきました。
主祭神には人々に塩づくりの製法を伝えた神、塩土老翁神(しおつちおじのかみ)が祀られています。塩は人間の生命維持に必要で、どれほど貴重であったのかが分かります。鹽竈神社の東側にある七曲坂(ななまがりさか)は、塩土老翁神が通られたと伝えられています。森の中の曲がりくねった未舗装の道は、静寂が漂う昔からの神聖な参道です。
古に思いをはせながら、ゆっくりと散策するのも素敵な時間となります。ご神域のパワーもたくさん頂けることでしょう。
塩竃神社と別宮として、志波彦神社(しわひこじんじゃ)が同じ境内に鎮座しています。志波彦神社の主祭神の志波彦神は、東北地方平定の折、塩土老翁神に協力したと言われています。鹽竈神社は海の神として、志波彦神社は農耕の神として祀られています。また、鹽竈神社の正式名称は「志波彦神社・鹽竈神社」です。
鹽竈神社の後に、志波彦神社を参拝すると良いと言われています。塩の力で人生をすっきりと浄化してくれる神社に参拝して、生き生きと楽しく過ごしたいですね。
鹽竈神社の特徴
鹽竈神社の創建については、明らかにされていません。平安時代初期に編纂された「弘仁式」に「鹽竈神を祭る料壱万束」と記されてあることから、1,200年以上前には創建されていました。また、「弘仁式」によると破格の厚い祭祀料を授かっていたようです。
朝廷からの篤い信仰を受けながらも、『延喜式』の神名帳には記載されていません。鎌倉時代以降は東北鎮護・海上守護の要として、陸奥国一之宮鹽竈神社は重んじられてきました。
鹽竈神社には、別宮と左右宮があります。別宮に主祭神である塩土老翁神が祀られ、左右宮に武甕槌神(たけみかづちのかみ)と経津主神(ふつぬしのかみ)が祀られています。主祭神がなぜ別宮なのかと疑問に思いますが、鹽竈神社では別宮は特別な宮であると考えられています。
門を入って正面には左右宮が置かれ、門の右手に別宮が置かれています。左右宮の神は、茨城県の鹿島・香取の神なので南向き、別宮の神は海の神であり海難を背負って頂くようにと海を背に西向きになっています。別宮の神は塩の神・安産の神として庶民から信仰され、左右宮は武神として権力者から崇められてきました。
また全国的にも珍しい三本殿二拝殿という社殿構成です。別宮には本殿一棟・拝殿一棟、左右宮には本殿二棟・拝殿一棟と特徴的な神社です。
本殿は素木造檜皮葺(しらきづくりひわだぶき)の三間社流造り、拝殿は朱漆塗銅板葺入母屋造となっています。装飾を抑えた素木の本殿・幣殿・廻廊に対し、拝殿は総漆塗です。
本殿の三間社流造りは京都の加茂神社を参考に、拝殿は魔除けとして朱を使ったのではないかと言われています。そして本殿と拝殿の造りの違いは、神仏習合の時代に神職と僧侶の立ち入れる場所を区分けするための違いだったようです。
本殿・拝殿・四足門(唐門)・廻廊・随神門のほか14棟、石鳥居1基が、平成14年に国の重要文化財の指定を受けました。江戸時代中期の壮大で端正な、価値ある建造物として評価されています。
そして、鹽竈神社の境内にある志波彦神社は、『延喜式』の神名帳に「名神大社」として記載されています。朝廷より格別の崇敬を受けていた由緒ある神社です。
元々は4kmほど西南西の地、岩切村(仙台市宮城野区岩切)に祀られていました。明治7年に鹽竈神社の別宮として同一境内に遷座され、その後、昭和13年に現在の場所に建立されています。本殿・拝殿は朱黒漆塗りの極彩色で、塩竃市の文化財に指定されています。鹽竈神社とは趣を変えた美しい建造物です。
鹽竈神社と志波彦神社は『延喜式』の神名帳より式内社・式外社と違いがありますが、どちらも朝廷より篤く崇敬されていた歴史ある神社であることが分かります。
鹽竈神社のご祭神
鹽竈神社
主祭神 別宮:塩土老翁神 航海・潮の満ち引き・海の成分を司る神
左宮:武甕槌神(たけみかづちのかみ) 雷神・剣神・武神・鹿島の神
右宮:経津主神(ふつぬしのかみ) 香取の神
志波彦神社
主祭神 志波彦大神 産業振興・国土開発・農耕守護の神
鹽竈神社のご利益
鹽竈神社は、海上安全・大漁満足・武運長久・国家安泰・安産守護・延命長寿・交通安全・必勝・成功、あらゆるご利益があります。
また、鹽竈神社は多賀城の鬼門を守っていたことから、厄除・方除けとしても信仰されてきました。塩の神社でもあるので、浄化のパワーも強力です。
鹽竈神社のどこが見どころか?
鹽竈神社には参道が三か所あります。七曲坂の他に表参道と裏参道があり、正面の表参道には、階段が202段もあります。鹽竈神社のお祭り、帆手祭、花祭、みなと祭には、その石段をおよそ1tもの神輿が担ぎ手によって降ろされます。街中を練り歩いた後、石段を登って神輿は神社に戻ってきます。
帆手祭は、戦時中も中止せず受け継がれています。神意のままに動き回る、荒れ神輿として有名です。
花祭では一切言葉を発せず鐘と太鼓・雅楽が流れる中、しずしずと白装束の担ぎ手が神輿を担ぎます。
みなと祭は「日本三大船祭り」のひとつです。みなと祭では、鹽竈神社からは総黒漆塗りの黒神輿、志波彦神社からは一部朱塗りの赤神輿が奉安され海上渡御されます。
二隻の御座船「龍鳳丸」「鳳凰丸」が、およそ100隻もの供奉船を従えてが共船を従え松島湾内を巡行します。御祭神の鹽土老翁神への感謝として、氏子たちによって年に一度海へお連れする勇壮華麗な祭りとして知られています。
それから鹽竈神社の境内には、鹽竃桜を始め、江戸時代の経世論家・林子平(はやししへい)が長崎から持ち帰った鑞梅、北限地帯の老大木である多羅葉など、珍しくて貴重な植物がたくさんあります。
また、献魚台であったり、林子平が考案した日時計、松尾芭蕉が感銘したと言われる文治神燈、併設の博物館など鹽竈神社は見どころが満載です。
鹽竈神社の一番パワーのある所
塩土老翁神が通ったと言われる七曲り坂は、鹽竈神社の最古の参道であり、最も神聖な場所です。通るたびに心身が浄化される、パワーが強い坂です。
また、長い石段がある表参道は、登りきるとパワーがみなぎると言われています。坂道や階段を歩くのが大変な方は、無理をせずに緩やかな東参道を利用しましょう。
鹽竈神社全体が塩の強力な浄化作用によって、悪いものを追い払ってご利益を頂くことが出来るパワーのある神社です。
ライター 梅花桜花
基本情報
住所:〒985-8510 宮城県塩竈市一森山1-1
TEL:022-367-1611
アクセス:
・JR仙石線 本塩釜駅 表参道(表坂)の石鳥居まで徒歩約15分
・東参道(裏坂)の石鳥居まで徒歩7分
・社務所前まで徒歩で約15分、タクシーで5分
・三陸自動車道 利府中ICより車で約10分
利府塩釜ICより車で約10分
仙台港北ICより車で約15分